導入9年のLEDビジョンの表示崩れを、AI(Claude)と2日間で直した話
導入から9年がたったLEDビジョンの表示が崩れ、AI(Claude)と一緒に2日間の現場作業で直しました。原因はLEDの故障ではなく、受信カードのプログラム(FW)と設定ファイルの組み合わせでした。現場から写真を送り、AIが読み解いて次の設定を返す。その往復で解決した記録です。
現場と症状
現場は都内のナイトクラブです。フロアの正面に、9年前に導入されたLEDビジョンが設置されています。
項目 | 内容 |
画面 | 横7×縦3=21キャビネット、896×384ピクセル |
画素ピッチ | 3.9mm |
制御システム | NovaStar(送信カード MCTRL300、受信カード A4s) |
設定ソフト | NovaLCT |
相談を受けたときは、PCの画面を映すと絵がバラバラに崩れ、近づくと4行おきに暗い帯(縞)が入っていました。LEDが壊れたように見えますが、原因は「どのLEDにどの映像を送るか」という受信カードの割り当てにありました。
1日目:縞の原因を切り分ける
1日目は、縞の正体を絞り込むことに使いました。
21枚の受信カードのプログラム(FW)を、同じ版にそろえました。縞は残りました。
導入時の設定ファイルを、古い版のNovaLCT(V5.4.3)で送り直すと、縞が消えました。同じファイルでも、別の版(V5.2.0)で送ると縞が戻ります。
古いNovaLCTは、そのままでは送信カードを認識しませんでした。裏で動くサービスを新しい版のものに差し替えて、ようやくつながりました。
縞が消えたあとも、各キャビネットの上半分に別の段の絵が出る「ずれ」が残りました。そこで、行と列の番号を書き込んだテスト画像を作って全画面に映し、写真から「どのモジュールにどこの絵が出ているか」を読めるようにしました。
1日目はこの「ずれ」1点まで絞り込み、次に試す設定ファイルを20通り用意して終わりました。
2日目:FWを新しくして見えた「右側だけずれる」問題
2日目は、受信カードのFWを新しい版(4.6.1.0)に上げるところから始めました。現場から出たアイデアです。
MCU(カードの制御プログラム)を書き換えると、カードに保存された設定が消えます。正しく出始めていたキャビネットも、更新後に崩れました。
導入時のFWに戻すと、左半分は全段正しく、右半分は映らない状態。元のFWが手元に残っていたので、巻き戻しはできました。
FW 4.6.1.0に上げ直して元の設定を送ると、左列は正しく、右列だけ段の順番がずれました。
全面を赤で光らせるテストでは、どのキャビネットも右列の上から2段目だけが消えていました。右列のユニットに割り当てた番号が、実際には2つずれた段の絵を出していたのです。ところが設定画面の「データ組の交換」表は4行しかなく、ずらした番号(9以上)を入れられませんでした。
解決のカギ:16枚構成の仮想キャビネット
突破口は、現場から出た「8枚構成ではなく、16枚構成にできないか」というアイデアでした。
キャビネットの実物は、64×32ピクセルのユニットが横2×縦4の8枚です。設定の上だけ縦を倍の256にすると、カードは横2×縦8=16枚のキャビネットとして扱います。下の8枚は実在しませんが、交換表が8行(番号16個)に増え、右列にずらした番号を書けるようになりました。

図:設定の上だけ縦を倍(256px)にすると、受信カードは横2×縦8=16枚のキャビネットとして扱います。下の8枚は実在しませんが、交換表が8行に増え、右列の番号を2つずらして書けるようになりました。
右列の段 | 元の設定の番号 | 実際に出た絵 | 新しい設定の番号 |
1段目 | 8 | 4段目の絵 | 10 |
2段目 | 9 | なし(消灯) | 11 |
3段目 | 10 | 1段目の絵 | 12 |
4段目 | 11 | 2段目の絵 | 13 |
番号は設定ファイル内部の値です。この設定を送ると、全段・全列が正しく並びました。途中で試した「縦横とも倍」の設定では、右列が直る代わりに左列が崩れ、それが「縦だけ倍」にするヒントになりました。
LEDビジョンを運用する方へ:今回わかった5つのポイント
古いLEDビジョンの表示が崩れたときに、まず確かめてほしいことです。
表示崩れは、LEDの故障とは限らない。 受信カードのFWと設定ファイルが合っているかを先に疑う。
設定ソフトは、版によって結果が変わる。 今回は、FWの更新は新しい版、設定の送信は古い版と使い分けました。
受信カードのMCUを更新すると、カード内の設定が消える。 正しく映っているカードは触らない。
正しく映るまで「固化」しない。 固化(カードへの保存)をしなければ、電源を入れ直すだけで元に戻せます。
導入時の設定ファイルとFWを保管しておく。 今回は元のファイルが残っていたので、比較と巻き戻しができました。
受信カードや電源ユニットなど、部品ごとの寿命と交換時期は「LEDビジョンの寿命を左右する消耗部品と交換時期」で解説しています。
縦線やドット抜けなど症状別の切り分けは「LED表示に縦線・ドット抜けが出たときのチェックリスト」、NovaStarの入力・スケーリング設定の基本は「NovaStarコントローラーの基本設定」でまとめています。
AIと現場の二人三脚
今回の作業は、現場の担当者とAI(Anthropic社のClaude)の往復で進めました。現場が試して撮り、AIが読んで次の設定を作る。この繰り返しです。
役割 | 現場(人) | AI(Claude) |
見る | 壁の全体とアップ、設定画面を撮って送る | 写真の番号から、どのユニットにどの絵が出ているかを読む |
考える | 発想(FWの更新、16枚構成)と最終判断 | 設定ファイルの中身を読み、原因の仮説を立てる |
作る | 設定の送信、FWの書き込み、安全の確認 | 試験用の設定ファイルを作り、現場PCのデスクトップに直接置く |
2日間でやり取りした写真・画面は約230枚、AIが作った設定ファイルは約50個です。
AIも間違えます。今回も、MCUをすべて更新する案にAIが賛成し、正しく映り始めていた状態を消してしまいました。AIの提案は仮説として扱い、1回に1か所ずつ実機で確かめる。この進め方が最後に効きました。
よくある質問
Q. LEDビジョンに縞が入るのは故障ですか?
故障とは限りません。今回は受信カードのFWと設定ファイルの組み合わせが原因で、LEDそのものは正常でした。
Q. 受信カードのFWを更新するときの注意は?
MCUを更新するとカード内の設定が消えます。元の設定ファイルとFWを手元に置き、正しく映るまで固化しないことが大切です。
Q. AIは修理にどう使いましたか?
現場の写真や設定画面を送り、AIが表示のずれを読み解いて試験用の設定ファイルを作りました。判断と作業は現場が行いました。
まとめ
9年前の機材でも、原因を一つずつ切り分ければ直せます。今回は、現場の経験から出たアイデアと、AIの速い分析がかみ合いました。
XIVでは、故障箇所の写真を送るだけの無料写真診断も行っています。他社製・保証切れのLEDビジョンもご相談いただけます。
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